技術職の経験を「好き」と結びつける:無理なく始めるシニア向けセカンドキャリアの見つけ方
技術職の経験を「好き」と結びつける:無理なく始めるシニア向けセカンドキャリアの見つけ方
長年にわたり技術職としてご活躍され、定年を迎え、あるいはこれから迎えられる皆様にとって、セカンドキャリアについて考えることは、新たな可能性に満ちた一方で、少なからず戸惑いもあるかもしれません。体力的なこと、ITへの不安、そして「これまで」の経験をどう活かせるのかといった様々な考慮事項があることと存じます。
キャリア再設計ラボでは、皆様がご自身の経験やスキルを見つめ直し、多様な選択肢の中から最適なセカンドキャリアを見つけるためのお手伝いができればと考えております。この記事では、特に技術職として培われた貴重な経験と、ご自身の「好き」や長年の関心事を結びつけ、無理なく始められるセカンドキャリアを見つけるヒントをご紹介いたします。
なぜ、技術経験と「好き」を結びつけることが有効なのか
セカンドキャリアを考える上で、これまでの職業経験を活かしたいと考えるのは自然なことです。技術職として積み重ねてこられた経験は、特定の専門知識だけでなく、問題解決能力、論理的思考力、計画性、継続的に学び続ける姿勢など、幅広い場面で通用する貴重なスキルを含んでいます。
一方で、これらの経験をそのまま同じ職種で活かすことが体力的に難しい場合や、新しい環境に飛び込むことにためらいを感じる場合もあるかもしれません。そこで注目したいのが、皆様がこれまで大切にしてきた「好き」や長年の関心事です。
ご自身の技術経験と「好き」を結びつけることには、以下のようなメリットが考えられます。
- 働くことへのモチベーション維持: 好きなことに関わるため、仕事や活動そのものが楽しく、継続しやすい傾向があります。
- 経験と知識の相乗効果: 技術的な視点や問題解決スキルが、好きな分野での活動に新たな視点をもたらし、より深く関わることを可能にします。
- 無理のない働き方: 趣味や関心事に関連する活動は、比較的柔軟な働き方や関わり方を選べる場合が多く、体力や時間的な制約に合わせやすい可能性があります。
- 新しい人間関係: 共通の「好き」を持つ人々との繋がりは、新たなコミュニティや居場所を見つけるきっかけとなり、社会との良好な関係を築く助けになります。
あなたの「好き」と「技術経験」を見つめ直すヒント
まずは、ご自身の内側にある「好き」や「関心事」、そして技術職として培われた経験を丁寧に棚卸ししてみましょう。
「好き」や「関心事」の棚卸し
過去から現在に至るまで、あなたが時間や労力を費やしてきたこと、自然と興味が向かうものは何でしょうか。
- 学生時代や若い頃に熱中した趣味や活動
- 仕事以外の時間で調べたり、学んだりしてきたこと
- 特定の分野(歴史、芸術、自然、乗り物、食など)への関心
- 行ってみたい場所、やってみたいこと
- 人から「詳しいね」と言われること
- ボランティアや地域活動への興味
これらをノートに書き出すなどしてリストアップしてみましょう。ITツールに慣れていない場合でも、手書きのノートやメモ用紙で十分です。ご家族や親しい友人と昔の話をする中で、思い出すこともあるかもしれません。
技術経験の「抽象化」
次に、技術職としてのご経験を具体的な業務内容だけでなく、そこで培われた「どんな能力か」という視点で捉え直してみましょう。
- 問題解決能力: 課題を見つけ、原因を分析し、解決策を見出す力
- 論理的思考力: 物事を体系的に整理し、筋道を立てて考える力
- 計画性・段取り力: 目標達成のために、必要な手順やリソースを考え、計画を実行する力
- 分析力・観察力: データや状況を注意深く観察し、その意味や関連性を見抜く力
- 専門知識: 特定分野に関する深い知識や理解
- 継続学習力: 新しい技術や知識を学び続ける意欲と能力
- 正確性・丁寧さ: 細部まで気を配り、正確に物事を進める姿勢
これらのスキルは、必ずしも技術分野に限らず、多様な場面で求められる汎用性の高い能力です。
「好き」と「技術経験」の接点を探す
リストアップした「好き」や「関心事」と、棚卸しした「技術経験から得られた能力」を見比べて、重なり合う部分や、一方を他方で活かせそうな部分がないか考えてみましょう。
例えば、「歴史が好き」で「資料の整理や分析が得意」であれば、地域の歴史資料館での資料整理ボランティアや、地域史研究グループでの活動補助が考えられます。「植物を育てるのが好き」で「計画性や改善提案が得意」であれば、地域の公園緑地管理のサポートや、NPOが行う農業支援での効率化に関する助言などが考えられます。
直接的に結びつかなくても、「好き」な活動を行っている団体で、経理知識を活かした会計補助や、運転スキルを活かした送迎ボランティアなど、これまでの経験から得た責任感や正確性を活かせる裏方業務もあります。
技術経験と「好き」を活かせる具体的なセカンドキャリアの形
いくつか、技術経験と「好き」を結びつける可能性のあるセカンドキャリアの例をご紹介します。これらはあくまで一例であり、皆様の経験や「好き」に応じて様々な形が考えられます。
- 地域のNPO・市民活動団体でのサポート: 環境保護、子ども支援、高齢者支援など、様々な分野のNPOや市民活動団体があります。「好き」な分野の団体で、団体の運営を支えるITサポート(ITスキルがある場合)、広報物の作成補助(デザイン思考)、イベントでの段取り・設営(計画性)、データ入力・集計(正確性)など、多様なスキルを活かせます。
- 地域の文化施設・学習機関での活動: 図書館、博物館、公民館などで、資料整理、イベント準備、来場者の案内、特定の分野に関する講座の補助講師など。歴史や芸術、科学など特定の分野に「好き」がある場合、その分野の施設での活動は大きなやりがいにつながります。
- 地域の技術系ボランティア・相談員: ものづくり、修理、プログラミングなど、特定の技術分野に関する知識やスキルを活かし、地域の住民向け講座の講師を務めたり、困っている方の相談に乗ったりする活動です。
- 地域密着型の小規模ビジネスでの補助: 地域の小売店や個人商店などで、商品の陳列方法の改善提案、在庫管理のサポート、簡単な事務作業など。長年培った効率化の視点や計画性が役立つことがあります。
- 特定の趣味に関する専門知識を活かす: 写真、骨董品、特定の道具など、長年の趣味で培った深い知識を活かし、地域の愛好会でアドバイスをしたり、関連イベントで解説を行ったりする活動です。
これらの多くは、必ずしもフルタイムで働く形ではなく、ボランティア、パートタイム、週に数時間の活動といった、体力や時間に無理のない範囲で関わることができるものです。
情報を集め、一歩を踏み出すには(オフラインでの情報収集・相談を中心に)
セカンドキャリアについて考え始め、具体的な活動を見つけたいと思ったとき、どこに相談すれば良いのでしょうか。ITツールやインターネットでの情報収集に抵抗がある場合でも、対面や電話で相談できる身近な窓口や情報源が多数あります。
- ハローワーク(公共職業安定所): 全国のハローワークには、「生涯現役支援窓口」や「シニアコーナー」が設置されている場合があります。ここでは、年齢に関わらず求人情報の提供を受けられるほか、セカンドキャリアに関する相談や、就職活動の支援を受けることができます。職員の方に直接相談しながら、ご自身の経験や希望に合った仕事を探すことが可能です。
- シルバー人材センター: 地域の高齢者に対して、臨時的かつ短時間・短期間の仕事を紹介しています。技術経験を直接活かせる仕事がある場合や、地域貢献につながる様々な仕事が見つかる場合があります。登録説明会などに参加して、具体的な仕事内容や働き方について相談できます。
- 地域の社会福祉協議会: ボランティア活動に関する情報提供や相談を行っています。地域のNPOや団体との繋がりも深いため、ご自身の「好き」や経験を活かせるボランティア活動を見つけるための強力な味方となります。
- 市区町村役場の担当窓口: 高齢者福祉課や地域振興課など、自治体によって担当部署は異なりますが、地域の高齢者向けの活動や支援に関する情報を持っている場合があります。生涯学習講座や市民活動に関する情報が得られることもあります。
- 地域のNPO支援センター、市民活動支援センター: 地域の様々なNPOや市民活動団体に関する情報が集まっています。活動内容や人材募集の有無などを尋ねることができ、ご自身の関心がある分野の団体と繋がるきっかけになります。
- 地域の情報誌、回覧板、掲示板: デジタル化が進む中でも、地域の情報はこうした媒体で共有されていることがあります。地元のイベント情報や、人材募集、ボランティア募集などが掲載されていることがあります。
- 友人・知人、地域のコミュニティ: 身近な人からの情報は、時に最も役立つことがあります。地域の集まりや町内会活動などで、情報交換をしたり、活動の誘いを受けたりすることもあります。
これらの窓口や情報源をいくつか訪ねてみることで、これまで知らなかった地域の活動や仕事、そしてご自身の経験を活かせる意外な機会に出会える可能性があります。職員や担当者の方に、ご自身のこれまでの経験や、どのようなことに関心があるのかを率直に伝えてみましょう。
まとめ
長年の技術職経験は、単なる職務経歴ではなく、幅広い能力と深い知識の宝庫です。そして、ご自身の「好き」や長年の関心事は、セカンドキャリアを豊かにし、無理なく続けるための大切な要素です。
この二つを結びつけることで、経済的な側面だけでなく、生きがいや社会との繋がり、そして何よりもご自身の人生を楽しむための新たな一歩を踏み出すことができるはずです。
焦る必要はありません。まずは、ご自身の「好き」や得意なこと、そしてどんな働き方・関わり方が自分に合っているのかを、ゆっくりと見つめ直すことから始めてみてはいかがでしょうか。そして、今回ご紹介したような身近な相談窓口や情報源を活用しながら、無理のないペースで情報を集め、最初の一歩を踏み出してみてください。皆様のセカンドキャリアが、豊かなものとなるよう願っております。